GIORGIO ARMANIの電話機


下宿をはじめて間もなく電話を親に設置してもらった。

電話機を買う金もなかったので,どこで手に入れたか知らないが親父の持っていたGIORGIO ARMANIの電話機を使うことにした。

GIORGIO ARMANI!イタリアの高級ブランドである。

ここのスーツなどは恐ろしく高い値段で,シャツでも10万円以上する。

そんなブランド物の電話機を弱冠19歳の私はわくわくしながら使い始めた。

黒のプラスチック製で受話器にプッシュダイヤルボタンがついていた。GIORGIO ARMANIと小さく書いてあったが,それがなければ500円で買えそうなチープな電話機だった。

しかし,着信すると背面で1mm×200mmの透明なプラスチック部分が緑色にちらちら光出すという特技を持っていた。今では携帯電話のアンテナがピカピカ光るのは当たり前だが,当時は新鮮だった。

イタリアというのは服とか食いもんとかはゴージャスだが,電気製品となるととたんに信用おけなくなるもので,GIORGIOは1年もしないうちに調子が悪くなった。”0”を押してもダイヤルの信号が出なくなったのである。”0”が入らないというのは致命的で”0”を使う電話番号,特に市外通話が一切かけられない。ただ,力まかせに押すとたまに”0”が入るので何とかなった。

この特殊な機能が後に私を困らせることになる。

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